このページは、Gotal社より提供されたアルカリ性洗剤【Gotal チェーンディグリーザーの素】で約7か月間約5,000km走行したチェーンを洗浄し続けた実験的記事です。
動機
シマノのディーラーズマニュアルに、以下のようなアルカリ性洗剤は使用しないよう注意書きがある。
メンテナンスの頻度は、ライディングの状況により異なり
シマノより引用
ます。チェーンを適切なチェーンクリーナーで定期的に洗
浄してください。錆び落としなどのアルカリ性、あるいは
酸性の洗浄液は決して使用しないでください。これらを使
用するとチェーンが破損し、重傷を負うおそれがありま
す。
また過去には和泉チエンIzumi Chain Twitterアカウントからは下のように、アルカリ性洗剤の使用でチェーンが割れる旨のツイートが流れていた。
対して、Gotal社からは以下のようにチェーン洗浄に使用しても問題ないアルカリ性洗剤であることが説明されている。
チェーンを傷めない 水素脆化を起こさない、特殊成分。テフロンやアルミの強度も低下させません
gotalより引用
チェーンメーカー側とチェーンクリーナーメーカー側の意見が異なっているように見える中で、アルカリ性洗剤のみ使った洗浄をチェーンの寿命が終わるまで続けるとどうなるかを試してみたくなった。
使用機材
チェーン:シマノ CN-HG601(11スピードチェーン)
洗浄剤:Gotal チェーンディグリーザーの素(アルカリ性粉末チェーン洗剤)
チェーンの使用環境
チェーンは、愛車Cannondale CAAD12に装着し、通勤やロングライド、グラベルライド等多目的に使った。
使用距離は約5,000km。
使用期間は2022年8月から2023年3月までの約7か月間。
チェーンクリーナーの使い方
Gotal社製チェーンクリーナーは特殊で、粉末成分をお湯で溶かしてチェーンを洗浄する。
自分は下記事で書いたタッパーを使ったチェーン洗浄を続けた。
結果
約7か月5,000km走行の間、チェーンディグリーザーの素を使い続けた結果、何も異常は起きなかった。
写真の通り、目立つ錆びもチェーンプレートの割れも無い。
通常の使用時と同じように、走行距離が延びるにつれチェーン伸びの影響から変速不良は起きているが、それは減点対象にはならない。
BIKE HANDチェーンチェッカーでチェーン伸びを確認してみた。
チェーン伸びは1.0が半分ほど入る程度でいつも通りという感じ。
次にチェーン内部を分解し汚れの残留を確認してみる。
プレート内側のスプロケットやチェーンリングの歯に触れない部分に汚れの堆積が確認できる。
またローラーとプレートの接触面にも若干の汚れがある。
分解したチェーン内部をウエス(日本製紙 ワイプオール)で拭き上げてみる。
内部に残っている汚れや錆びの程度は許容範囲でもあり、これもいつも通りという感じがする。
この汚れは超音波洗浄機であれば落としきってしまえるのか。
しかしこの程度の残留物がどのくらいのフリクションロスを生み出すのだろう。(大したことは無さそうな気がするけれど)
まとめ
アルカリ性洗剤であるチェーンディグリーザーの素を使い続けた結果、チェーンには異常は見られなかった。
【チェーン洗浄にアルカリ性や酸性の洗剤は危険=チェーンクリーナーの液性による金属脆化が起こる】という説明では単純化しすぎていると感じる結果になった。
またチェーンメーカーとチェーンクリーナーメーカーの意見が異なる状況はユーザーの混乱を招くので、チェーンメーカーとチェーンクリーナーメーカー共同開発製品があれば、より使いやすいだろうなと思う。
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コメント
メーカーは何度も色んな方法や状況で試した結果を以て危険性を公言してるわけでチェーン寿命一回の意見を出されても『それで?』ってなるんですよねぇ
単純化した書き方じゃないと変に混乱しますし、まぁ製造元の意見を普通は信頼しますね
やっぱりこんな感じの結果になりますよね
金属にとってアルカリや酸が悪い影響を与えるのは事実でしょうけどメーカーが言う程の影響あるならもっとブチブチ切れる報告あるだろうな~って正直思ってました
今はAZのディグリーザーとパワーゾルを交互に使用してますが(レビュー記事が購入の参考になりました)ディグリーザーの方が使用感良いんですよね(綺麗になる、匂いがしない等)
コメントありがとうございます。
レビュー記事がお役に立ったようで嬉しいです!
チェーンメーカーの立場を察するに、どんな使い方をしてもチェーンに悪影響が無いクリーナーしか勧められず、注意喚起をするなら一般人にとても分かりやすい説明しかできない、というところから酸性、アルカリ性という液性での説明しかできない状況に至っている、というのではないかなー、と思います。
また(まともな)クリーナーメーカー側としては、専門知識(一般人には説明されても理解できる人が少ない)領域での開発となり、アルカリ性でも問題無いので販売している。
ということなんじゃないかなーと、勝手に推測しています。
チェーンのクリーニングを考えて作ったメーカーとトイレやお風呂掃除用とは別物だと思う。チェーンメーカーもチェーンクリーナーを使用してと言ってる。アルカリ性だからでは無いような気がする。同じ実験を住宅用洗剤のアルカリ性で原液等でやったら違いが出るかも知れません。
私もそう思います。
液性だけでは説明できないんだと。
チェーンメーカーがチェーンクリーナーを使用してと言ってる、のソースなどあればお教えください。
灯油洗浄が一番。
灯油洗浄は私も好きです。
灯油も別のクリーナーもチェーンディグリーザーの素も、それぞれメリット・デメリットがあるので、使いやすいものを使うのが良いと思います。
ちょうど 「チェーンディグリーザーの素」 を使い始めるところだったので、参考になりました。
この件、シマノのサポートへも聞きましたので、コメント入れておきます。
ご参考になれば嬉しいです。
この話題、機械系や材料系のエンジニアなら 「まあそうだね」 となる話なのですが、一般には解りにくい話だと思います。みなさんコメントされている様に、アルカリ性なのが問題じゃないんです。
面倒なチェーン洗浄を楽にするため、洗浄力の高いアルカリ性ディグリーザを使いたいのですが、GOTALが言う通り、従来からあるアルカリ性ディグリーザをそのまま使うとチェーンが破損してしまう可能性があり、シマノもそれを心配しているとのことでした。
※専門的に言うと「応力腐食割れ(アルカリ脆化)、水素脆化による割れ」が生じて破損します
ただ、アルカリ性が問題なのではなく、技術進歩でどの材料が原因なのかが特定できる様になってきており、それを避ければアルカリ性であっても大丈夫というのがGOTALの意見。
シマノもアルカリ性のディグリーザを使わないでと言っていますが、理由は上記の破損を心配してとのことだったので、GOTALの言う通りであればシマノも納得できることになります。
ちなみにこの話、シマノのサポートエンジニアも興味を持たれた様で、そのディグリーザ、どこの会社のどの製品ですか? と逆質問されてしまいました(笑)
メチェメチャわかりやすいですね
水素脆化ってそもそも酸性で基本起こるものなのでブログなどで水素脆化するから危ない!と発生するのが当然のように発信されているのか謎でした。
アルカリでも起こりうることは論文でも確認しましたが発生条件は本当に謎だったので、シマノさんのような安全性を担保しないといけないメーカーからしたら原因の解明できないことは禁止事項とすべきだな、っていうのも納得でした。
昨今のマジックリン論などでよく言われている、アルカリは水素脆化を起こすから危ない、は正確ではなくアルカリでも水素脆化を起こすことは確認されており、その原因が特定できていないためどの洗剤が危険かリスクが読めないから推奨できない、というのが自分の中の結論になりました。